Linuxサーバのログ取得・監視設定:IT監査で確認すべきポイント

IT監査実践編(Linux②)Linuxサーバのログ取得・監視設定:IT監査で確認すべきポイント

はじめに:なぜLinuxサーバのログ管理がIT監査で重要なのか IT監査において、Linuxサーバのログ取得・監視設定は避けて通れない重要な確認項目です。ログは「システムの証跡」であり、セキュリティインシデントの発生時には原因究明の唯一の手がかりとなることも少なくありません。 近年、サイバー攻撃の高度化やコンプライアンス要件の厳格化に伴い、適切なログ管理の重要性は年々高まっています。金融庁の「金融機関のITガバナンスに関する対話のためのオブザベーション」や、経済産業省の「サイバーセキュリティ経営ガイドライン」においても、ログの適切な取得・保管・監視は重要な管理策として位置づけられています。 本記事では、IT監査の実務担当者向けに、Linuxサーバのログ取得・監視設定において確認すべきポイントを具体的に解説します。監査を受ける側のシステム管理者の方にとっても、事前準備のチェックリストとして活用いただける内容となっています。 背景・概要:Linuxログ管理の基本を理解する Linuxにおけるログの種類と役割 Linuxシステムでは、様々なログが生成されています。IT監査において特に重要なログは以下の通りです。 ログの種類 主な格納場所 記録される内容 システムログ /var/log/syslog または /var/log/messages OS全般のイベント、サービスの起動・停止 認証ログ /var/log/auth.log または /var/log/secure ログイン試行、sudo実行、認証関連 カーネルログ /var/log/kern.log カーネルメッセージ、ハードウェア関連 監査ログ /var/log/audit/audit.log auditdによる詳細な操作記録 アプリケーションログ 各アプリケーション固有 Webサーバ、DB、ミドルウェア等のログ rsyslogとjournaldの違い 現代のLinuxディストリビューションでは、主に2つのログ管理システムが使用されています。 rsyslogは、従来からあるsyslogの拡張版で、テキストベースのログファイルを生成します。設定ファイルは/etc/rsyslog.confにあり、柔軟なフィルタリングやリモート転送が可能です。 systemd-journaldは、systemdに統合されたログ管理機能で、バイナリ形式でログを保存します。journalctlコマンドで参照でき、メタデータの豊富さが特徴です。 多くの環境では、両者が併用されており、journaldで収集したログをrsyslog経由でファイル出力するという構成が一般的です。 IT監査におけるログ管理の位置づけ IT監査フレームワークにおいて、ログ管理は以下の領域に関連します。 COBIT 2019: DSS05(セキュリティサービスの管理)、MEA01(性能とコンプライアンスの監視) ISO 27001:2022: A.8.15(ログ取得)、A.8.16(監視活動) NIST CSF: DE.CM(セキュリティ継続的モニタリング)、DE.AE(異常とイベント) これらのフレームワークに基づき、ログ管理の適切性を評価することが求められます。 具体的な確認ポイント:IT監査で押さえるべき8項目 ポイント1:ログ取得対象の網羅性を確認する 確認の目的:セキュリティ上重要な操作やイベントがすべて記録されているかを検証します。 確認すべき項目: 認証関連イベント ログイン成功・失敗(ローカル、SSH、コンソール) sudo実行とその結果 パスワード変更、アカウントロック 特権操作 root権限での操作 重要な設定ファイルの変更 サービスの起動・停止 ファイルアクセス 機密データへのアクセス システム設定ファイルの変更 実行ファイルの変更 実務での確認方法: # rsyslogの設定確認 cat /etc/rsyslog.conf | grep -v "^#" | grep -v "^$" # auditdのルール確認 auditctl -l # journaldの設定確認 cat /etc/systemd/journald.conf 監査上の着眼点: ...

May 11, 2026 · 4 分
Linuxサーバ監査:アカウント・権限管理のチェックポイント

IT監査実践編(Linux①)Linuxサーバ監査:アカウント・権限管理のチェックポイント

はじめに:なぜLinuxサーバのアカウント・権限管理監査が重要なのか Linuxサーバは、企業のWebサービス基盤やデータベースサーバ、社内システムのインフラとして広く利用されています。その一方で、適切なアカウント管理と権限設定が行われていないLinuxサーバは、内部不正や外部からのサイバー攻撃の格好の標的となります。 実際、IPA(情報処理推進機構)の調査によると、情報セキュリティインシデントの約40%が内部者による不正アクセスや権限の悪用に起因しているとされています。また、CVE(共通脆弱性識別子)データベースに登録される脆弱性の多くは、不適切な権限設定を悪用するものです。 本記事では、IT監査担当者やセキュリティ実務者向けに、Linuxサーバのアカウント・権限管理を監査する際の具体的なチェックポイントを解説します。監査手順書の作成や実際の監査作業に役立つコマンド例も豊富に紹介しますので、ぜひ実務にお役立てください。 背景・概要:Linuxにおけるアカウント・権限管理の基本 Linuxのアカウント管理の仕組み Linuxでは、すべてのユーザーに一意のユーザーID(UID)が割り当てられます。アカウント情報は主に以下のファイルで管理されています。 /etc/passwd:ユーザーアカウントの基本情報(ユーザー名、UID、GID、ホームディレクトリ、ログインシェルなど) /etc/shadow:パスワードのハッシュ値やパスワード有効期限などの認証情報 /etc/group:グループ情報とグループに所属するユーザー一覧 /etc/gshadow:グループパスワードの情報 権限管理の基本概念 Linuxでは、ファイルやディレクトリに対して「所有者(owner)」「グループ(group)」「その他(others)」の3つのカテゴリごとに「読み取り(r)」「書き込み(w)」「実行(x)」の権限を設定できます。これを「パーミッション」と呼びます。 また、特殊な権限として以下の3つがあります。 SUID(Set User ID):実行時に所有者の権限で動作 SGID(Set Group ID):実行時にグループの権限で動作 Sticky Bit:ディレクトリ内のファイル削除を所有者のみに制限 これらの設定が不適切な場合、権限昇格(Privilege Escalation)攻撃の対象となる可能性があります。 監査の目的と観点 Linuxサーバの監査では、以下の観点から確認を行います。 完全性(Integrity):不正なアカウントや設定変更がないか 機密性(Confidentiality):機密情報へのアクセスが適切に制限されているか 可用性(Availability):正当なユーザーが必要なリソースにアクセスできるか 説明責任(Accountability):操作履歴の追跡が可能か 具体的なチェックポイント チェックポイント1:不要なアカウント・無効化すべきアカウントの特定 監査の目的 使用されていない古いアカウントや、本来無効化すべきシステムアカウントが放置されていると、攻撃者に悪用されるリスクがあります。退職者のアカウントが残っているケースは非常に多く、これが内部不正の温床になることもあります。 確認コマンドと手順 全ユーザー一覧の取得 # /etc/passwdの内容を確認 cat /etc/passwd # ユーザー名のみを抽出 cut -d: -f1 /etc/passwd ログイン可能なアカウントの特定 # ログインシェルが/bin/bash、/bin/sh等のアカウントを抽出 grep -v -E "nologin|false" /etc/passwd 最終ログイン日時の確認 # 各ユーザーの最終ログイン情報 lastlog # 90日以上ログインのないアカウントを抽出 lastlog -b 90 パスワード期限情報の確認 # 特定ユーザーのパスワード情報 chage -l username # 全ユーザーのパスワード有効期限を一括確認 for user in $(cut -d: -f1 /etc/passwd); do echo "=== $user ==="; chage -l $user 2>/dev/null; done 実務上のチェックポイント チェック項目 合格基準 推奨対応 退職者アカウント 存在しない 退職日に即時削除または無効化 長期未使用アカウント 90日以内のログイン履歴あり 180日未使用で自動ロック設定 不要なシステムアカウント ログインシェル無効 /sbin/nologinに設定 チェックポイント2:root権限の管理とsudo設定の監査 監査の目的 root(UID=0)は Linuxシステムにおける最高権限であり、その管理が不適切だとシステム全体が危険にさらされます。直接rootログインを禁止し、sudo経由で必要最小限の権限を付与する「最小権限の原則(Principle of Least Privilege)」の実装状況を確認します。 ...

May 10, 2026 · 4 分
'Everyone管理者'は危険:Windowsローカル管理者権限の監査ポイント

IT監査実践編(Windows③) 'Everyone管理者'は危険:Windowsローカル管理者権限の監査ポイント

はじめに:なぜ今、ローカル管理者権限の監査が重要なのか 「困ったらとりあえず管理者権限を付与する」——この対応、心当たりはありませんか? 実務の現場では、アプリケーションのインストールやトラブル対応のために、エンドユーザーにローカル管理者権限を付与するケースが後を絶ちません。しかし、この「とりあえず管理者」という運用が、企業のセキュリティを根底から揺るがすリスクを抱えていることを、どれだけの方が認識しているでしょうか。 本記事では、ITセキュリティ・IT監査の専門家の視点から、Windowsローカル管理者権限の適切な管理と監査について、実務で即座に活用できるポイントを詳しく解説します。 背景・概要:“Everyone管理者"が生まれる理由と危険性 ローカル管理者権限とは何か まず基本から確認しましょう。Windowsローカル管理者権限とは、個々のPCにおける最高レベルの権限を指します。具体的には、Administratorsグループに所属するユーザーアカウントが持つ権限のことです。 この権限を持つユーザーは、以下のような操作が可能になります: ソフトウェアのインストール・アンインストール システム設定の変更 他のユーザーアカウントの作成・削除・変更 セキュリティソフトの無効化 レジストリの編集 ファイアウォール設定の変更 すべてのファイル・フォルダへのアクセス なぜ"Everyone管理者"状態が発生するのか 「Everyone管理者」とは、筆者が用いる表現で、本来必要のないユーザーまで含めて、ほぼ全員がローカル管理者権限を持っている状態を指します。この状況が発生する典型的な理由を見てみましょう。 1. レガシーアプリケーションの存在 古いアプリケーションの中には、管理者権限がないと正常に動作しないものがあります。2000年代初頭に開発されたソフトウェアは、Windows XP時代の緩いセキュリティモデルを前提に設計されていることが多く、こうしたソフトウェアを使い続ける限り、管理者権限の付与が「必要悪」として容認されてしまいます。 2. ヘルプデスクの負担軽減 「プリンタドライバをインストールしたい」「このソフトを入れたい」——こうしたユーザーからの問い合わせに対応するため、「最初から管理者権限を渡しておけば問い合わせが減る」という判断がなされることがあります。 3. 開発者・技術者への配慮 開発環境では様々なツールのインストールや設定変更が必要なため、開発者には管理者権限が付与されることが一般的です。しかし、この「開発者だから」という理由が拡大解釈され、IT部門全体、さらには「ITに詳しそうな人」全般に広がってしまうケースがあります。 4. 過去の慣習の踏襲 「以前からこうだった」という理由だけで、セキュリティ上問題のある運用が継続されている組織は少なくありません。 具体的なリスクと被害事例 ローカル管理者権限の濫用がもたらすリスクは、決して理論上の話ではありません。 ランサムウェア感染の拡大 2023年のセキュリティベンダーの調査によると、ランサムウェア被害を受けた企業の約70%で、初期感染端末のユーザーがローカル管理者権限を持っていたと報告されています。管理者権限があることで、マルウェアはセキュリティソフトの無効化、システムファイルの暗号化、そして横展開(ラテラルムーブメント)を容易に実行できます。 内部不正のリスク増大 管理者権限を持つユーザーは、監査ログの改ざんや削除、セキュリティ設定の変更が可能です。これにより、内部不正の発見が困難になり、被害が長期化する傾向があります。 コンプライアンス違反 PCI DSS、ISO 27001、SOC 2などの各種セキュリティ基準では、最小権限の原則(Principle of Least Privilege)の適用が求められています。Everyone管理者状態は、これらの基準への明確な違反となり、監査で指摘を受けるリスクがあります。 監査ポイント①:現状把握——誰がローカル管理者なのかを可視化する ローカル管理者の棚卸しが第一歩 監査の第一歩は、現状を正確に把握することです。「うちは大丈夫だろう」という思い込みは禁物です。実際に調査してみると、想定以上の人数がローカル管理者権限を持っていることが珍しくありません。 手動での確認方法 小規模な環境であれば、各PCで以下のコマンドを実行することで確認できます。 # ローカルAdministratorsグループのメンバーを表示 net localgroup Administrators または、PowerShellを使用してより詳細な情報を取得できます: # ローカルAdministratorsグループのメンバーを詳細表示 Get-LocalGroupMember -Group "Administrators" 大規模環境での効率的な確認方法 数百台、数千台のPCを管理している環境では、手動確認は現実的ではありません。以下のアプローチを検討してください。 Active Directoryを活用した一括確認 ドメイン環境であれば、グループポリシーで「制限されたグループ」の設定を確認することで、どのアカウントがローカル管理者として配布されているかを把握できます。 スクリプトによる収集 以下のようなPowerShellスクリプトを配布実行することで、全PCの情報を一元的に収集できます: # 各PCのローカル管理者情報をCSVに出力 $computerName = $env:COMPUTERNAME $admins = Get-LocalGroupMember -Group "Administrators" | Select-Object Name, ObjectClass, PrincipalSource $admins | Export-Csv -Path "\\server\share\AdminReport_$computerName.csv" -NoTypeInformation 専用ツールの活用 ...

May 9, 2026 · 2 分
Windows Updateは本当に適用されている?監査で見るべきポイント

IT監査実践編(Windows④) - Windows Updateは本当に適用されている?監査で見るべきポイント

はじめに:「更新プログラムは自動適用されているから大丈夫」は本当か? 「うちはWindows Updateを自動更新にしているから、セキュリティパッチは問題なく適用されていますよ」 IT監査の現場で、このような回答を受けることは珍しくありません。しかし、実際に詳細を確認してみると、数か月前のセキュリティ更新プログラムが未適用のままだったり、一部の端末だけが更新から漏れていたりするケースが後を絶ちません。 2024年に公開されたIPAの情報セキュリティ10大脅威においても、脆弱性を悪用した攻撃は依然として上位にランクインしています。ランサムウェア攻撃の多くは、既知の脆弱性を突いて侵入しており、パッチ管理の不備が直接的な被害につながっているのです。 本記事では、IT監査やセキュリティ担当者の視点から、Windows Updateが本当に適用されているかを確認するための具体的な監査ポイントを解説します。形式的なチェックで終わらせず、実効性のあるパッチ管理体制を構築するためのヒントとしてご活用ください。 背景:なぜWindows Updateの監査が重要なのか パッチ未適用が招くセキュリティリスク Windows Updateには、機能更新プログラムだけでなく、セキュリティ更新プログラム(セキュリティパッチ)が含まれています。Microsoftは毎月第2火曜日(日本時間では第2水曜日)に定例のセキュリティ更新を公開しており、これを「Patch Tuesday(パッチチューズデー)」と呼びます。 セキュリティパッチが適用されていない状態は、いわば「鍵のかかっていないドア」を放置しているようなものです。攻撃者は公開された脆弱性情報を基にエクスプロイト(脆弱性を悪用する攻撃コード)を開発し、パッチ未適用のシステムを狙います。 実際に、2017年に世界中で猛威を振るったWannaCryランサムウェアは、Microsoftがパッチを公開してから約2か月後に大規模な被害を引き起こしました。パッチ適用が遅れた組織が次々と被害に遭い、その損害額は全世界で数十億ドルに達したと推計されています。 監査における確認不足の実態 多くの組織では、Windows Server Update Services(WSUS)やMicrosoft Endpoint Configuration Manager(MECM、旧SCCM)、あるいはIntune(Microsoft Intune)などのツールを使用してパッチ管理を行っています。しかし、監査の現場では以下のような問題が頻繁に発見されます。 管理ツールと実態の乖離:WSUSのレポートでは適用済みと表示されているが、実機を確認すると未適用 管理対象外端末の存在:BYOD端末や例外的に導入された端末が管理から漏れている 適用ポリシーの形骸化:ポリシー上は「7日以内に適用」と定めているが、実際には数か月放置されている 再起動保留による未完了:更新プログラムはダウンロードされているが、再起動が行われず適用が完了していない これらの問題は、表面的なチェックでは見落とされがちです。だからこそ、実効性のある監査が求められるのです。 監査で見るべき8つのポイント ポイント1:パッチ管理ポリシーの整備状況を確認する 監査の第一歩は、組織のパッチ管理ポリシーが適切に整備されているかを確認することです。ポリシーには以下の要素が含まれているべきです。 確認すべき項目: パッチ適用の対象範囲(サーバー、クライアントPC、仮想マシンなど) 適用期限の定義(緊急パッチは○日以内、通常パッチは○日以内など) 適用前のテスト手順 適用除外の承認プロセス 責任者と役割分担 実務でのチェックポイント: ポリシー文書が存在するだけでは不十分です。以下の観点で実効性を確認しましょう。 □ ポリシーは最新の状態に更新されているか(最終更新日を確認) □ 従業員がポリシーの存在と内容を認識しているか □ ポリシー違反時の対応手順が明確か □ 適用除外の承認記録が残されているか 多くの組織では、ポリシーは作成されているものの、年に一度も見直されていないケースがあります。Windows 10からWindows 11への移行期には、サポート期限やアップデートサイクルの違いを反映する必要があるため、ポリシーの鮮度は重要な確認ポイントです。 ポイント2:パッチ管理ツールの設定と運用状況を確認する 多くの企業ではWSUSやMECM、Intuneなどのパッチ管理ツールを使用しています。これらのツールが適切に設定・運用されているかを確認します。 WSUS環境での確認項目: □ WSUSサーバーがMicrosoft Updateと正常に同期しているか □ 同期スケジュールは適切か(最低でも1日1回を推奨) □ 承認ワークフローが機能しているか □ クライアントがWSUSサーバーと正常に通信しているか □ コンピューターグループが適切に設定されているか WSUSでよくある問題例: ある企業では、WSUSサーバーのディスク容量不足により同期が数週間停止していました。管理画面上はエラーが表示されていましたが、担当者が確認していなかったため発見が遅れました。 WSUSサーバーの正常性確認コマンドの例: # WSUSサーバーの同期状態を確認 Get-WsusServer | Get-WsusSubscription | Select-Object LastSynchronizationTime, SynchronizationStatus Intune環境での確認項目: ...

May 9, 2026 · 3 分
Windows Event Viewerでここまで分かる:IT監査で使うログの読み方

IT監査実践編(Windows②) - Windows Event Viewerでここまで分かる:IT監査で使うログの読み方

はじめに:なぜIT監査でWindowsイベントログが重要なのか IT監査の現場で「証跡を見せてください」と言われたとき、あなたは自信を持って対応できますか? Windows Event Viewer(イベントビューアー)は、Windowsに標準搭載されているログ管理ツールです。追加コストゼロで、システムの動作記録、セキュリティイベント、アプリケーションエラーなど、膨大な情報を確認できます。しかし、多くのIT担当者がその読み方を十分に理解しておらず、監査対応で苦労しているのが現実です。 本記事では、IT監査の実務で本当に使えるイベントログの読み方を、具体的なイベントID番号や実践的なフィルタリング手法とともに解説します。内部監査、外部監査、J-SOX対応など、さまざまな場面で活用できる知識を身につけましょう。 背景:IT監査におけるログ証跡の位置づけ IT監査とログの関係性 IT監査では、「いつ」「誰が」「何をしたか」を証明することが求められます。これを実現するための最も基本的な証跡がシステムログです。 監査法人やIT監査人が確認する主な観点は以下の通りです: アクセス管理の妥当性:権限のある人だけがシステムにアクセスしているか 変更管理の適切性:システム変更が承認プロセスを経ているか 操作ログの完全性:重要な操作が記録され、改ざんされていないか インシデント対応の適時性:問題発生時に迅速に検知・対応しているか Windows Event Viewerは、これらすべての観点に対する証跡を提供できる強力なツールなのです。 法的・規制要件との関連 日本のIT環境では、以下の規制やフレームワークがログ管理を要求しています: 規制・フレームワーク ログに関する主な要件 J-SOX(内部統制報告制度) ITに係る業務処理統制の証跡保管 個人情報保護法 アクセスログの取得・保管 ISMS(ISO 27001) A.12.4 ログ取得及び監視 PCI DSS 要件10 ネットワークリソースへのアクセス追跡・監視 これらの要件を満たすため、Windowsイベントログは最低限の基盤として機能します。 Windows Event Viewerの基本構造 イベントビューアーの起動方法 イベントビューアーを起動する方法は複数あります。実務では状況に応じて使い分けましょう。 方法1:検索バーから Windowsキー → 「イベントビューアー」と入力 → Enter 方法2:ファイル名を指定して実行 Windowsキー + R → 「eventvwr.msc」と入力 → Enter 方法3:コマンドプロンプトから eventvwr.exe 方法4:リモート接続 eventvwr.exe /s:リモートサーバー名 特に方法4のリモート接続は、複数サーバーの監査で重宝します。ただし、適切な権限(イベントログリーダー権限以上)が必要です。 主要なログカテゴリ イベントビューアーを開くと、左ペインに複数のログカテゴリが表示されます。IT監査で特に重要なのは以下の4つです。 1. セキュリティログ(Security) 最も重要なログです。ログオン/ログオフ、特権使用、オブジェクトアクセス、アカウント管理など、セキュリティに関するイベントが記録されます。 デフォルト最大サイズ:20MB(Windows Server 2019以降) 保存場所:%SystemRoot%\System32\Winevt\Logs\Security.evtx 閲覧権限:Administrators グループまたは Event Log Readers グループ 2. システムログ(System) OSのコンポーネント、ドライバー、サービスに関するイベントが記録されます。システム停止、サービス起動失敗、ハードウェアエラーなどを追跡できます。 ...

May 7, 2026 · 4 分
Active Directory監査入門:まず押さえるべき5つのチェックポイント

IT監査実践編(Windows①) - Active Directory監査入門:まず押さえるべき5つのチェックポイント

はじめに:なぜActive Directory監査が重要なのか Active Directory(以下、AD)は、Microsoft社が提供するディレクトリサービスであり、企業のITインフラにおける「心臓部」とも言える存在です。ユーザー認証、アクセス制御、グループポリシーの配布など、組織のセキュリティ基盤を支える重要な役割を担っています。 しかし、その重要性ゆえに、ADは攻撃者にとっても格好の標的となっています。2023年の調査によれば、企業へのサイバー攻撃の約80%以上がActive Directoryを経由または標的としているとされています。一度ADが侵害されると、組織全体のシステムやデータが危険にさらされる可能性があります。 本記事では、IT監査担当者やセキュリティ実務者の方々を対象に、Active Directory監査を実施する際に「まず押さえるべき5つのチェックポイント」を詳しく解説します。これからAD監査に取り組む方はもちろん、既存の監査手順を見直したい方にも役立つ内容となっています。 Active Directory監査の背景と概要 Active Directoryとは何か Active Directoryは、Windows Server上で動作するディレクトリサービスです。簡単に言えば、「組織内のユーザー、コンピュータ、リソースを一元管理するためのデータベース」と考えることができます。 ADの主な機能は以下の通りです: 認証(Authentication):ユーザーが本人であることを確認する 認可(Authorization):ユーザーがどのリソースにアクセスできるかを制御する ディレクトリサービス:組織内のオブジェクト(ユーザー、グループ、コンピュータなど)の情報を格納・管理する グループポリシー:組織全体のセキュリティ設定やソフトウェア配布を一括管理する なぜ監査が必要なのか AD監査が必要な理由は、大きく分けて3つあります。 1. セキュリティリスクの低減 設定ミスや不適切な権限付与は、内部不正や外部攻撃の入り口となります。定期的な監査により、これらのリスクを早期に発見・是正できます。 2. コンプライアンス要件への対応 J-SOX(内部統制報告制度)、ISMS(ISO 27001)、PCI DSSなど、多くのセキュリティ基準でアクセス管理の適切性が求められています。AD監査はこれらの要件を満たすための基本的な活動です。 3. インシデント対応能力の向上 監査を通じてAD環境の現状を把握しておくことで、セキュリティインシデント発生時の調査・対応がスムーズになります。 AD監査の全体像 AD監査は、以下のような観点から実施されます: 監査領域 主なチェック内容 アカウント管理 不要アカウントの有無、パスワードポリシーの適切性 権限管理 特権アカウントの管理状況、過剰な権限付与の有無 グループ管理 グループメンバーシップの適切性、入れ子構造の複雑さ 監査ログ ログ設定の適切性、ログの保管・監視状況 セキュリティ設定 グループポリシーの設定内容、脆弱な設定の有無 それでは、具体的な5つのチェックポイントを見ていきましょう。 チェックポイント1:特権アカウントの棚卸しと管理状況 なぜ特権アカウントが最重要なのか 特権アカウントとは、システム全体に対して強力な権限を持つアカウントのことです。ADにおける代表的な特権グループには以下があります: Domain Admins:ドメイン全体の管理権限を持つ Enterprise Admins:フォレスト(複数ドメインの集合)全体の管理権限を持つ Schema Admins:ADスキーマ(構造定義)を変更できる Administrators(ビルトイン):ドメインコントローラーのローカル管理者 これらのアカウントが侵害されると、攻撃者は組織全体を掌握できてしまいます。そのため、特権アカウントの管理は最優先のチェック項目となります。 具体的なチェック手順 Step 1:特権グループのメンバー一覧を取得する PowerShellを使用して、特権グループのメンバーを確認します: # Domain Adminsグループのメンバーを取得 Get-ADGroupMember -Identity "Domain Admins" -Recursive | Select-Object Name, SamAccountName, ObjectClass # Enterprise Adminsグループのメンバーを取得 Get-ADGroupMember -Identity "Enterprise Admins" -Recursive | Select-Object Name, SamAccountName, ObjectClass Step 2:メンバーの妥当性を確認する ...

May 6, 2026 · 4 分